ヴィーガンとは
ベジタリアンとビーガンの違い
ベジタリアンは肉や魚介類などの動物性食品を食べず、野菜などの植物性食品を摂取する人を指します。日本では「菜食主義者」と呼ばれています。
一方、ビーガンは肉や魚介類に加え、卵や乳製品、蜂蜜など、動物から得られるすべての食品を口にしません。ビーガンは食事だけでなく、衣類や生活用品にも動物性の製品を使わないことが一般的です。日本では「完全菜食主義者」と呼ばれています。ビーガンはベジタリアンよりもさらに厳格に動物性のものを排除する生活を実践しています。
ベジタリアンとは
近代のベジタリアン運動は、19世紀の産業革命期にマンチェスターの聖書協会の会員によって始まりました。彼らは肉や魚を食べず、卵や乳製品の摂取は個人の選択に委ねる形で、穀物、野菜、豆類などの植物性食品を中心とした食生活を推奨しました。
「ベジタリアン」という言葉は1840年頃にイギリスで使われ始めたと考えられており、その由来については二つの説があります。一つは、ラテン語の“vegetus”(健全な、新鮮な、元気のある)から派生したという説、もう一つは、“vegetable”(野菜)に人を表す接尾辞“tarian”を組み合わせたという説です。
ベジタリアンの種類は主に以下の7つに分けられます。
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ラクト・ベジタリアン:
- 特徴: 肉や魚介類、卵は摂取せず、植物性食品とともに牛乳やヨーグルト、チーズなどの乳製品を食べます。ラテン語の「ラクト(lactos)」は「乳」を意味します。
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オボ・ベジタリアン:
- 特徴: 肉や魚介類、乳製品は摂取せず、植物性食品と卵製品を食べます。ラテン語の「オボ(ovum)」は「卵」を意味します。
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ラクトオボ・ベジタリアン:
- 特徴: 肉や魚介類は摂取せず、植物性食品とともに乳製品と卵製品を食べます。
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ポーヨー・ベジタリアン:
- 特徴: 肉類の中で鶏肉のみを食べ、植物性食品と魚や卵、乳製品も摂取します。
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ペスコ・ベジタリアン(ペスカタリアン):
- 特徴: 肉以外の魚や卵、乳製品などの動物性食品と植物性食品を食べます。
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オリエンタル・ベジタリアン:
- 特徴: ニラ、ニンニク、ねぎ、らっきょう、浅葱(あさつき)の「五葷」を除いた植物性食品を食べます。主に台湾を中心としたアジア圏で見られるスタイルです。
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セミ・ベジタリアン:
- 特徴: 基本的に植物性食品を食べますが、時々肉も摂取します。
ヴィーガンとは
ビーガンはベジタリアンの一形態として発展しました。ベジタリアンの中でも、道徳的・倫理的な理由から動物性食品を避けることを選ぶ人々を指します。ビーガンにはいくつかの種類があり、その代表的なものは以下の2つです。
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フルータリアン: 日本では「果物常食者」とも呼ばれるフルータリアンは、植物性食品の中でも果実や種子類だけを食べるスタイルです。「フルー」は「フルーツ」に由来しています。
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ロー・ビーガン: ロー・ビーガンは、調理法に基づく分類で、生の食品(または46度以上に加熱された食品)を基本に食事を摂ることを特徴としています。
ベジタリアンになる理由
ベジタリアンを始める理由は多岐にわたります。宗教的な理由としては、イスラム教では豚肉を食べることが禁じられているため、その教義に従ってベジタリアンの食生活を選ぶ人がいます。
健康面での理由もあります。動物性食品が身体に悪影響を及ぼし、生活習慣病やがんのリスクを高めると考えられるため、これを避けるためにベジタリアンになる人もいます。
また、環境や倫理の観点からもベジタリアンが選ばれます。食用の家畜の命を人間と同等に考えることや、動物の成長を促すために使用される肥育ホルモン剤、飼料用穀物の不足による食の不均衡、家畜の排出するメタンガスによる地球温暖化など、多くの問題に対する懸念からベジタリアンの食生活が選ばれることがあります。
このように、ベジタリアンを選ぶ理由はさまざまであり、心身の健康を求めるために実践する人が多いです。
ベジタリアン、ビーガンの健康
ベジタリアンやビーガンの生活では、動物性食品を排除するため、肉や魚、卵、乳製品から得られる栄養素を摂取することができません。これらの食品は、タンパク質やビタミンB群、鉄分、カルシウム、ビタミンDなどの重要な栄養素を豊富に含んでいます。
しかし、動物性食品に含まれるこれらの栄養素は、非動物性食品から作られたサプリメントや強化食品を活用することで摂取することが可能です。適切なサプリメントや食品を選ぶことで、ベジタリアンやビーガンの食生活でも必要な栄養素を十分に補うことができます。
ベジタリアン、ビーガンの人口(世界、日本での普及率)
ビーガンを含むベジタリアンの人口は、毎年約1%の増加傾向にあり、2018年には約6.3億人に達しました。地域別に見ると、宗教的な理由や文化的背景から、アジアで約60%を占め、欧米諸国では約20%となっています。特に欧米諸国では、ベジタリアンやビーガンの人口が年1%近く増加している傾向があります。
日本では、2021年12月の調査によれば、約5%の人口がベジタリアンまたはビーガンの食生活を実践しているとされています。